2005年09月29日第7回 RSR!そしてリリーフランキー!!8月20日 午前11時すぎ。 やっと入場した。入場するまでの、 「へ〜い、ミンナ!腕につけたリストバンドを無くしたらぁっ 戻ってくるぅ?甘〜い甘い!世の中そんなに甘くないぜぇ〜っ!!」 とかなんとかいうアナウンスが、もう東京に帰りたいと真に思うほど、うざかった。しかし、中に入ってみればこっちのもんである。入ったときには、人はいっぱい居るようで、実はまばらだった。この写真は場所探し中のものだが、実際はもっとかなり前に居座ることができた。
なんと、なんと、せっかくRSRに来ながら、僕はここからほとんど、写真を撮っていない。目の前で起こることがあまりにめまぐるしくて、写真など撮っている余裕は無かったのだ。 ロックフェスにひとりで来るのはつらい。もし来るなら、よほどの音楽好きでないとダメだ。僕は、何をしたらいいのか分からなかった。みんなビニール袋を持ち歩いているので、僕もそれを探して回ったり、いざとなると敷物を忘れていることに気づいてパニックになったり、音楽どころではなかった。いま思えば、ただ、流れているものを聞けばよかったのだが。 そうこうしていると、生ゲノムCEO・須田さんのイベントが始まるということで、ブラックホールというコメディテントへと移動した。僕は関係者ということで、スタッフカードのようなものを首から下げていたが、須田さんの首からは「ARTIST」というオレンジの札が下がっていた。僕もあれを首から下げたいなと思った。 ところでここで、ブラックホールの致命的な問題が明らかになる。あるアーティストを見ると、次のアーティストは見られないという問題である。須田さんの次は、あの、あのリリー・フランキーである。つまり、須田さんを見てしまうと、リリーさんは見られないということになる。 これは迷った。須田さんをとるか、リリーさんをとるか。これは、僕にとってあまりにつらい選択だった。これは「あなたは仕事と私、どっちが大事なの?」と問われているようだ。「カレー味のウンコとウンコ味のカレー、どっちを食べるの?」とも同じだ。僕は迷った。 そばに居た須田さんの奥さんは言った。 「須田さん見なきゃええやん」 いやいやいや、そうはいかない。ふつうに、見たいし。 迷いながら、須田さんの楽屋に入ると、そこには須田さんの対談相手・脳科学者の茂木健一郎さんが居た。茂木さんのことは、恥ずかしながら僕はなにひとつ知らなかったが、僕の脳の900倍くらい速く回転する脳をお持ちであることはすぐに分かった。これは何故か分からないが、すぐに分かったのだ。なんといっても、目の焦点が合っていない。どこを見ているのか分からない。僕を見ながら僕を見ていない。つねに思考と会話が同期している印象だった。ゲイの先生のドキュメンタリーを撮ったと言ったら「いいねぇ」と言った。なにが良いと思ったのかまでは分からない。 須田さんの回が始まった。それは、イギリスのコメディのことをテーマに、バカ映像を見せながら解説するというものだった。客数は多くなかったが、アカデミック×バカの乗算は、想像以上におもしろかった。須田さんがギネスビールにほろ酔いしているのが客席から分かった。 そして、須田さんの回が終わって楽屋に戻ると、な、なんと…目の前に、猫ひろしが全速力で「わ〜」と言いながら、行ったり来たり走っていた。楽屋でこのテンションか…と、プロのすごさを思った。 つづいて、目の前にピエール瀧、リリー・フランキーが現れた。め、目の前に、リリー・フランキーが…。リリー・フランキーは、ちょっとお腹のたるんだオカマさんたちをからかっていた。 なんていうか、オーラがすごかった。友だちの話すくらいの距離に居るのに、話すことはできなかった。 そういえば去年、最も敬愛する現代美術作家・会田誠に会ったときもそうだった…。もとはといえば僕のリクエストがきっかけで、あるパーティに出席した会田誠…。まわりのムサビ友人たちが気さくに話しかけていく中、僕は会田誠に話すどころか近づくことさえもできなかった。キュレーターのYさんから「大里君、いま話さないでどうするの?」と叱責をくらうなか、なんとか携帯の裏にうんこを描いてもらい、一緒に写メールを撮ったものの、まともに何かを話すことはできなかった…。 ならば、なぜ会いたいとか口に出すのだろう。しかしだね、本当に尊敬している人が目の前に現れたとき、同じ空気を吸っている"人間"であることが確認できたとき、僕はそれ以上なにをすればよいのか。ファンです!いや、ファンじゃないんだ。もっと尊敬しているんだと言いたい。ファンと有名人の立場分けを明確にしたくないんだ。 横浜赤レンガ倉庫で現代美術作家・ヤノベケンジの展覧会を見ているとき、ヤノベケンジが隣に居たときのことも思い出す。あのとき僕は、作家と作家の立場でお話をしたいな、と思った。そうでないとお話をしても意味が無いと思った。 僕はすぐ近くで見るだけで十分だったのだと思う。それで、あらゆることを一気に確認できたのだと思う。その確認を欲していたのだと思う。ああ、言っててむなしくなってきた。たぶん、いずれのチャンスも、勇気が無かっただけなんだろう。
…リリー・フランキーのイベントは、案の定満員で、小さなブラックホールの定員に溢れたファンたちが、おそらく1000人規模で、テントの周りを取り囲んでいた。 僕がお客として入る余裕は一切無かったが、周りの人の「裏から見とけ、見とけ」との後押しに押されて、かなりイレギュラーな場所から、そのトークイベントを見ることができた。 リリー・フランキーはおもしろかった。相変わらずだけれども。どうおもしろいとか、なかなか表現しにくいけど、今までに聞いたことの無い部類のおもしろさだ。いま、この記事を書いている最中、たまたま、彼のファンになったきっかけである番組「TR2 Wednesday」が最終回を迎えた。彼のような文化をあっさり切り捨ててしまうのは、やっぱり僕は寂しいと思う。 まあ、違う番組として復活するようではあるけれど。
リリー・フランキーを見終わると、メイン会場で行なわれているフィッシュマンズのライブに向けて走った。会場内は広い。このとき空は、夕陽が落ちていくところだった。
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