9

2005年10月07日

第9回 シムシティな街、札幌。

8月21日、午前7時すぎ。

早朝の札幌駅に放り出された。幸い、街には人が流れていて、活気と呼ばれるようなものがあった。しかしまだ、すべての店が閉まっていた。

札幌駅には、僕をはじめ、RSRの独特の空間から一気に放り出されて、しかし現実に戻ることのできないダメ人間たちが、椅子という椅子に横たわっていた。もちろん僕も横たわった。なぜなら、これから何をしていいのかさっぱり分からなかったからだ。

なにをすればいいのか分かっている人は、すでに札幌には居ない。さっそくこれからの予定を確認しあう、生き生きとした若い女性たちを地下鉄で見た。ああいう人たちは、ニンゲン合格だ。いま、札幌は廃人、ダメ人間、音楽バカ、そういう人たちを受け止める、グレートマザーのような場所になっている。

眠気もあったが、このまま札幌のしがないベンチでぼうっとしているわけにはいかない。僕は街を散策してみることにした。

 

札幌というのは、想像以上に発展している。大きな建物ばかりだ。道路も整備されている。しかし、味気ない。この味気なさはなんだろうと思いながら歩く。

僕は疲れていて、ちょっと歩いただけで休みたくなってしまった。豪華なホテルの1階に、スターバックスがある。ここなら、しっとりとした気分でお目覚めコーヒーが飲めるに違いないと思って、勢いよく入店する。と、ここもやはり、RSR帰りの廃人どもで埋まっていた。この街でいま、タワレコとポカリの袋持ちながらさまよっている奴は全員廃人だ。店員は、僕の廃人的衣装を見て、「またか」という顔をしながら、軽くあざ笑った。

結局ホテルの貴族のお客さんたちも僕らがいることに相当な不快感があったみたいで、僕もなんとなく居づらくなって、お店を出てしまった。

コンビニで地図を見ると、時計台が近いらしい。駅前の時計が時計台じゃなくて良かった。それで、見に行った。

うーん、これは、つまり、時計台ですね。時計があるから。

でも記念撮影用に用意された台に、かなり長い時間おばあちゃんが乗っていて、ぴくりとも動かなかった。最初は彫像かと思ったが、人間だった。思わず僕も撮ってしまった。

さらにそこで、札幌の近くにはテレビ塔があると聞いて、実際にそれも見えたので、近づいてみる。うん、これはでかい。

しかし、その前に要らない彫刻が。タイトルは「希望」。なんだ、「希望」って。

それで、せっかくだからテレビ塔のなかに入ってみた。朝のくせに、人がいっぱいいる。観光地なんだろう。しかもエレベーターには、エレベーターガール。機械みたいな声でしゃべる。

「ああ、今日もかったりぃなあ。東京タワー行けばそのほうが良いに決まってるだろっ!」って思いながら、話してるのかなと想像した。美人だったけど。ウンコ行きたいときはどうするのかな、とも思った。

高いところから見た札幌は、遠くまで都市が続いていた。これはほんとの都市だ。栄えていると言える。しかし、街のならびがシムシティを連想させはしまいか。この味気ない感じ、シムシティなんだ。計画的であるということは、味気なさも生み出してしまうのだと思った。

で、全時代的なメダル作成機を発見。いまPS3が出ようとしているのに、この機械で喜ぶ子どもはいるのだろうか。僕は逆におもしろいけれど。

テレビ塔を降りてから、がぜん街を探索する気になった。そこで急いで、旧市庁舎に行ってみた。これは実に風情のある建物である。いまも現役で使っても良いくらいではないか。

しかし、市庁舎には中国人がいっぱいいる。たぶん、僕以外全員、中国人だ。僕にぶつかって、よく分からない言葉で謝ってくる。あと服装がなんだかサイケデリックだ。いま日本人でこういう色合わせの服着てる人、見ないな、という服装をしている。つまり文化の違いだろう。

市庁舎の中は、博物館のようなかたちになっている。写真撮影もOK。内装は非常に素晴らしい。なぜ現代建築は、この路線の建物を建てないのか。六本木ヒルズとか、こういう西洋な雰囲気を取り入れてもいいと思う。

ここが、たぶんエライ人が座るところだ。ここに座って「死刑!」とか言ってたんだろうか。言ってないか。市庁舎だしね。

旧市庁舎の前に、名前は失念したが、ボランティアで観光案内をしてくれるカフェがあった。入ったら、横田滋さんにそっくりなおじいさんが、丁寧に札幌の良さを強調してくれた。おじいさんの話は実に細かく、想像力をかきたてるので、彼が話せば話すほど、行かなくても行った気分になってしまった。

ふいに「小樽に行きたいです」といったら、おじいさんは専門外なのにどこからか小樽の資料を5,6冊くれた。実に親切である。お礼を言って、お店を出た。

札幌は味気ないと思ったが、よく見ると、旧庁舎のような西洋的な建物がちらほらあることに気づく。LOFTや西武も、東京とはかなり立ち振る舞いが違う。こっちのほうが断然すばらしい。堤さん、やりますねぇ。

ちょっと札幌が好きになった。

ここで携帯の電池が切れた。今日は昼過ぎに、いまだこの札幌のどこかでおやすみしている須田さんに、一緒に昼食を食べようとお誘いいただいているのだ。ここで電池が切れるのはまずいので、ドコモショップを探す。

すると札幌駅南口のふもとに、牛のコスプレをしながら「牛乳を飲みましょう」とティッシュを配っているお姉さんが目に付く。お姉さんは実に美しい。そこで、声をかける。

「ド、ドコモショップはどこですかぁ?」
「きたなな」
「えっ?」
「きたなな」

何を言っているのか分からない。方言かなと思ったが、もうひとり美しいコスプレ娘が近づいてきて、僕が東京から来たダメ廃人だと分かるや否や、北海道では道路のことを北の7とか、8とかと道路の名前で教えるのだと、丁寧に解説してくれた。テレビ塔のある大通りが1で、それから道路が南北に一本ずつ増えるにつれて、北4、とか南2、とか言うらしい。

これは一見わずらわしいが、実に機能的である。

丁寧に教えてもらって、見つけたドコモショップで無事充電完了。ついでにドコモ解約しようかなと思ったが、ここで解約したら充電した意味がないと悟り、思いとどまった。

現在時間は10時半。ほっとした瞬間、またもや眠くなった。すかさず駅構内にあるミスタードーナッツに駆け込んだ。ミスドはアメリカンコーヒーおかわりし放題である。

札幌にはまだ、ダメ人間たちが椅子と言う椅子で眠っていた。

 

書いている人 大里 圭介(ごろり)
Oosato Keisuke

<< 前へトップへ次へ >>